自分らしく生きる「故郷」という居場所
第9回 岩手県職員 下川結さん
岩手の魅力を再発見した 「いわてダ・ヴィンチ」 下川さんは、県職員として働き始めて4年になる。現在は定住推進・雇用労働室に所属し、学生などを対象としたU・Iターンに関するイベントの企画、運営などを担...
岩手で活躍するさまざまな“人”に焦点を当て、紹介する「いわてプライド」。 この土地に誇りを持って生きる人たちの、熱い想いを伝えます。
岩手を代表する伝統工芸品である南部鉄器は、かつて南部藩主が京都から盛岡へ釜師を招き、茶の湯釜を作らせたのが始まりとされている。400年以上続く歴史の中で、岩鋳が誕生したのは明治35年のこと。それから118年の歳月を経て、現在は岩清水弥生さんが4代目社長を務めている。
生まれた時から南部鉄器に囲まれて育った弥生さん。子どもの頃は休日になると決まって工場で遊んでいたそうで、今でも鉄の匂いに当時の思い出がよみがえってくるという。岩鋳の一員として働き始めた時は、作業工程などを職人に聞きながら一つ一つ学んでいった。
「本当は自分でやってみるのが一番ですが、職人技を一朝一夕で身につけることはできません。それならせめて自分の目で見て、聞いて、きちんとお客様に伝えられるようにと学びました」
一人前の職人になるためには、少なくとも10年はかかるといわれる南部鉄器の世界。その匠の技に憧れて門戸を叩く若者も多く、岩鋳には10~60代まで幅広い年代の職人たちが在籍している。弥生さんは社員教育をするに当たり、「技術に関することはベテランの職人が指導してくれるので、私は社員が安全に働ける環境を整えることを心がけています」と語る。
南部鉄器を作る工程では1400~1500℃に溶けた鉄を扱うため、夏になると50℃近い環境で作業を行う時もある。そうした中で職人たちは技術に磨きをかけながら、さらなる高みを目指し鉄と向き合い続けているのだ。伝統を守りながらも挑戦を忘れない彼らの姿を思い浮かべながら、弥生さんは「職人を含め、社員やその家族を守ることこそが、何よりも大切な私の仕事です」と熱く語った。
職人への尊敬と信頼が、自然と丁寧な接客につながっていく
岩鋳では伝統的な鉄瓶のほか、フライパンや鍋などのキッチンウエア、小物なども多く生産している。特に色鮮やかな急須は、雑貨店などでも多く目にするようになった。南部鉄器に着色するというこの発想は、もとはパリの紅茶専門店からのオーダーがきっかけだった。試行錯誤を重ね数年かけて完成したものの、当時は大きな不安を抱えていたという。
「それまで南部鉄器=黒というイメージしかなかったので、受け入れられるかどうか心配でした。ただ、新しいことにチャレンジできるのは、これまで磨いてきた技術があればこそ。社員が一緒に挑戦してくれたおかげで、現在では国内外を問わず多くの方にご愛用いただいています」
全体の売上としては国内販売が半数以上を占めるものの、インバウンド客が購入するケースも多い。国内においては年配客はもちろん、20代の若者からも注目を集めているという。また、新型コロナウイルスによる自粛期間中は、オンラインでの販売も増えた。時代の流れとともに、求める人も場所も変わりながら、未来へと確かに受け継がれていくのだろう。
暮らしの中に溶け込む美の世界は、高度な技によって生み出される
「岩手県は街の中心部に川が流れていたりして、とても美しい土地。さまざまな文化が育まれてきた土壌もあり、南部鉄器もまた、そうした暮らしの中で息づいてきました。私たちは南部鉄器の工房としては若い方になりますが、だからこそ伝統を守りつつ新たな挑戦をすることができます。これからも南部鉄器が世界中の人に愛されるよう、社員とともに邁進していきたいと思っています」
使えば使うほど味わいを増す南部鉄器。持ち主とともに変化するその姿は、常に使う人のことを考え、技術を磨き続ける職人の姿を現しているように思える。そしてそんな彼らがいるからこそ、弥生さんもまた変わらぬ想いを胸に、さらなる一歩を踏み出していくのだろう。
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フリーライター 山口由(ゆう)
2011年、東日本大震災をきっかけに横浜から盛岡へUターン。現在はフリーライターとして、お店や人材の紹介、学校案内、会社案内、町の広報誌など幅広く活動中。取材を通して出会うさまざまな人の思いや歴史を知り、「岩手ってすごいなぁ」と実感する日々を送っている。趣味は散歩と読書、長距離ドライブなど。ホームページはコチラ。
カメラマン 佐藤 到
1969年宮城県白石市生まれ。進学で来県すると、岩手の環境や住みやすさが気に入って定住。 写真店勤務を経て、フリーカメラマンとして独立。 フィルム時代から経験を積み現在は人物・風景・スポーツ・スクールスナップ・ウェディング・料理・商品などなど何でも撮影します。
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