いわてプライド

岩手で活躍するさまざまな“人”に焦点を当て、紹介する「いわてプライド」。 この土地に誇りを持って生きる人たちの、熱い想いを伝えます。

思い浮かぶのは、食べてくれた人の笑顔

第29回 花巻温泉株式会社 温泉ベーカリー店長 細川千春さん

思い浮かぶのは、食べてくれた人の笑顔

20年以上歩み続けた製菓の道

細川さんは、花巻温泉にある人気店「温泉ベーカリー」で店長を務めている。学生時代は調理の専門学校で学び、卒業するまでの間に、自分が最も苦手とする製菓の道へ進むことを決意した。その背景にあったのは「将来、子どもができたら自分が作ったケーキを食べさせたい」という思いだった。その夢を叶えた細川さんは、「我が子へのケーキは作り尽くしました」と語り、笑顔を見せる。

コロナ禍前は首都圏で話題の店へ視察に行くこともあったが、現在はSNSなどを活用して流行をリサーチ。食べた人が笑顔になる商品づくりを目指して、日々研究を重ねている。


朝早くから来店する人が後を絶たない「温泉ベーカリー」

朝早くから来店する人が後を絶たない「温泉ベーカリー」


大人気の花巻温泉名物

そんな「温泉ベーカリー」の看板商品といえば、なんといっても「花巻温泉あんぱん」だ。オープン当時から不動の人気を誇る逸品で、先代の店長が「温泉まんじゅうをパンで作ってみよう」と考案した。

岩手県産小麦「銀河のちから」を使用した薄皮と、ずっしりと重みを感じるほど詰まった粒あんが特徴。お土産としても人気があり、一度に20~30個を購入する人も珍しくない。現在は季節ごとに旬の食材を取り入れたプレミアム版のほか、冷凍したものも販売している。常温で30分ほど自然解凍するとアイスのような食感が楽しめることから、冷凍したものを好むファンも多いという。


地元の人からも愛され続けている「花巻温泉あんぱん」(写真提供/花巻温泉株式会社)

地元の人からも愛され続けている「花巻温泉あんぱん」(写真提供/花巻温泉株式会社)


総合レジャーランドとしての歴史

花巻温泉は1923(大正12)年に、台温泉から湯を引いて開業した。創始者である金田一国士(きんだいち・くにお)氏は、「花巻に、宝塚に匹敵するリゾート地を建設する」という目標を立て、第一号旅館となる花盛館(かせいかん)を皮切りに、貸別荘やゴルフ場、動物園などを次々とオープン。日本初となるナイタースキー場にはシャンツェ(スキージャンプ台)も完備した。


かつて高級旅館として愛された「松雲閣」(写真提供/花巻温泉株式会社)

かつて高級旅館として愛された「松雲閣」(写真提供/花巻温泉株式会社)


また、1927(昭和2)年に行われた「日本新八景」(主催:大阪毎日新聞社・東京日日新聞社)の人気投票では全国1位を獲得。開業からわずか4年でトップに立つという偉業を成し遂げ、総合レジャーランドとしての地位を確立していった。


創業当時の旅館「千秋閣」。現在も石垣が残されている(写真提供/花巻温泉株式会社)

創業当時の旅館「千秋閣」。現在も石垣が残されている(写真提供/花巻温泉株式会社)


思い出を守り続けてきた場所

「新幹線がなかった時代は電車を乗り継ぎ、10時間以上かけて足を運んでくださる方も多かったと聞いています」
そう教えてくれたのは、花巻温泉株式会社で営業企画課長を務める板垣和郎さんだ。時折、「昭和初期の頃に宿泊した」という人から、当時のパンフレットなど貴重な資料が送られてくることもある。板垣さんは、そうした人とのつながりが何より大切なものだと語る。

「思い出話をしてくださるお客様の中には、弊社の従業員より当時のことに詳しい方もいらっしゃいます。そうした方のお話を伺う度に、本当にたくさんの思い出が詰まった場所なのだと実感しますし、これからも守っていかなければならないという気持ちになります」


今も昔も、多くの人の心と体を癒やす花巻温泉

今も昔も、多くの人の心と体を癒やす花巻温泉


この先も、たくさんの笑顔と出会うために

コロナ禍では、客室に明かりが灯ることのない苦難の時期もあった。しかし、いち早く館内の設備や食事の提供方法など、できる限りの感染症対策を実施。今では少しずつ客足が戻り始め、今年3年ぶりに開催したバラ祭りには、昼夜問わず多くの人が来場した。


バラ園は約5000坪の敷地に、およそ450種6000株以上のバラが四季折々に咲き誇っている

バラ園は約5000坪の敷地に、およそ450種6000株以上のバラが四季折々に咲き誇っている

バラ祭りの開催中は「温泉ベーカリー」も大盛況で、「花巻温泉あんぱん」が売り切れ状態になることもあった。それ以外にも作り手の思いがこもった品々はどれも魅力的で、つい「あれも、これも」と選んでしまう。

「今は一風変わった惣菜系のクロワッサンを開発中です」と、語る細川店長。食べた人の笑顔を思い浮かべながら、これからも花巻温泉の新たな歴史を刻んでいく。


花巻温泉
https://www.hanamakionsen.co.jp/


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この記事を書いたひと

フリーライター 山口由(ゆう)

2011年、東日本大震災をきっかけに横浜から盛岡へUターン。現在はフリーライターとして、お店や人材の紹介、学校案内、会社案内、町の広報誌など幅広く活動中。取材を通して出会うさまざまな人の思いや歴史を知り、「岩手ってすごいなぁ」と実感する日々を送っている。趣味は散歩と読書、長距離ドライブなど。ホームページはコチラ。

https://tokkari-shouten.themedia.jp/

写真撮影

カメラマン 佐藤到(さとういたる)

カメラマン 佐藤 到

1969年宮城県白石市生まれ。進学で来県すると、岩手の環境や住みやすさが気に入って定住。 写真店勤務を経て、フリーカメラマンとして独立。 フィルム時代から経験を積み現在は人物・風景・スポーツ・スクールスナップ・ウェディング・料理・商品などなど何でも撮影します。
佐藤到 インスタグラム
https://www.instagram.com/forzaitaruy_ly25/

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