この街で、この味を守り続ける
第32回 平船精肉店代表 竹林誠さん
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岩手で活躍するさまざまな“人”に焦点を当て、紹介する「いわてプライド」。 この土地に誇りを持って生きる人たちの、熱い想いを伝えます。
「イチゴの旬は春」以前はそういったイメージがあったが、今はクリスマスケーキの需要に合わせた促成栽培が主流で、11月下旬から初夏を迎える頃まで販売されるようになった。
しかし、これはあくまで一年に一度だけ収穫する「一季成り性品種」のイチゴだ。それ以外に一年中、収穫することのできる「四季成り性品種」もあり、適した環境さえあれば夏でもおいしいイチゴを生産することができる。太田さんが代表取締役を務めているリアスターファームでは、この四季成り性品種のイチゴ、通称「夏イチゴ」を栽培している。
「イチゴは暑さに弱いため、一大産地として知られる栃木県や福岡県などでは、気温の低い時期にしか栽培することができません。そのため市場に出るイチゴの多くは、冬春どりの促成栽培になります。しかし三陸沿岸の地域は、夏は『やませ』の影響で涼しく冬は日照量が多いといった特徴があり、夏秋どりはもちろん、一年を通してイチゴの栽培に適した環境があるんです」
かつて大船渡市を含む気仙地域では、イチゴの露地栽培が盛んに行われていた。しかし流通面の課題や腰をかがめて行う作業の大変さから、次第に作り手が減少していった
農学博士の学位を持つ太田さんは、新潟県の出身。2014年に岩手県農業研究センターの研究員として採用され、大船渡市へ移住した。配属された南部園芸研究室(陸前高田市)では、東日本大震災津波からの早期復興を目的とした、中山間地域における施設園芸技術について研究を重ねたという。
5棟あるハウスは地元の間伐材などを利用した木骨ハウス。熱の吸収抑制に優れ、イチゴにとって最適な環境を整えてくれる
2018年に研究員の任期を終えた太田さんは、個人事業主として開業。翌年にリアスターファームを法人化し、イチゴ栽培を本格的にスタートさせた。栽培方法は自身が研究員時代に構築した、「2年8季どり」という同じ苗から2年間継続的に収穫する作型を採用している。
これは苗を2つのグループに分け、片方のグループが2年目の収穫を始めるタイミングで別のグループの苗を定植。それぞれが隔年で育苗、定植、収穫を繰り返すことによって、切れ目のない周年栽培を実現した新しい栽培モデルだ。
「イチゴは季節を問わず人気がありますが、国内で夏イチゴを作れる地域は少なく、冬春どりのイチゴと比べてわずか2%ほどの生産量しかありません。そのため夏イチゴは海外からの輸入品頼みになっているのですが、洋菓子店などでは国産品を望む声が多く、高いニーズがあります」
リアスターファームでは現在、糖度の高い「なつあかり」と、甘みと酸味のバランスが良い「信大BS8-9」、イチゴ本来の爽やかな酸味が特徴の「夏の輝」の3品種を中心に、日持ち性が高く流通に適した「すずあかね」や「夏のしずく」なども生産している。サイズもSSから4Lまで展開しており、洋菓子店が作るケーキのサイズに合わせて提供することが可能だ。
岩手県における夏イチゴの約6割を生産する同社。大船渡市とともに「夏イチゴ産地化プロジェクト」にも取り組んでいる
リアスターファームでは大船渡市のほか、陸前高田市と宮古市に農場を持ち、人材育成にも力を注いでいる。太田さんが人材育成に取り組む背景には、「三陸沿岸地域をイチゴの一大産地にしたい」という夢があった。
「ここは一年中、イチゴを作ることのできる特殊な場所です。この恵まれた地域資源を使ってイチゴを作る人が増えていったら、いつかきっと三陸沿岸がイチゴの産地と呼ばれるようになる。雇用の創出や観光事業など、イチゴを通して地域をもっと元気にしていきたいです」
最適な環境で無理なく安定した収量が得られるイチゴの栽培は、太田さんの夢とともに、これからますます広がりを見せていくように感じられた。
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フリーライター 山口由(ゆう)
2011年、東日本大震災をきっかけに横浜から盛岡へUターン。現在はフリーライターとして、お店や人材の紹介、学校案内、会社案内、町の広報誌など幅広く活動中。取材を通して出会うさまざまな人の思いや歴史を知り、「岩手ってすごいなぁ」と実感する日々を送っている。趣味は散歩と読書、長距離ドライブなど。ホームページはコチラ。
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