いわてプライド

岩手で活躍するさまざまな“人”に焦点を当て、紹介する「いわてプライド」。 この土地に誇りを持って生きる人たちの、熱い想いを伝えます。

岩手と世界をつなぐために、今できることを

第12回 岩手県ふるさと振興部 国際室 熊谷瑞穂さん

岩手と世界をつなぐために、今できることを

初任地で初めて訪れた県北

 「自分にとって岩手県は居心地のよい場所です」と語る熊谷さんは一関市の出身で、学生時代も県内の大学に通っていた。その頃から「将来は都心へ出るのではなく東北で働きたい」と考えていたため、岩手県庁の職員を志したのは、ごく自然な流れだった。

 入庁後の初任地は岩手の県北、二戸市にある二戸地域振興センターだった。県の最南端に位置する一関市で育ち、盛岡市より北へ行ったことがなかったという彼女。見える景色や気候が全く違う県北を訪れ、改めて岩手県の広さを実感した。


毎日使っている秀衡塗のお椀と、一関市にある老舗「京屋染物店」のあずま袋

毎日使っている秀衡塗のお椀と、一関市にある老舗「京屋染物店」のあずま袋

見知らぬ土地で触れた人の温かさ

 初めての土地では寒さや方言の違いに驚くと同時に、物静かな人が多いという印象を持った。比較的おしゃべりな人が多い地元と比べて、寡黙な人と出会うことが多かったためだ。しかし、人の心の温かさには北も南も関係ない。何気ない優しさや心遣いに感謝する毎日を過ごしながら、地域振興や雇用対策など幅広い業務を担当した。

 熊谷さんは当時のことを、「地域の人たちと話すうちに、季節の美味しいものやお気に入りの場所などをたくさん教えてもらいました。岩手を好きな人が多いと感じましたし、私自身もより岩手が好きになりました」と振り返る。

海外とのつながりを作る国際室

 その後、国際室に配属されて今年で3年目を迎えた。初任地では担当地域を中心に業務を行っていたが、今は各国の駐日大使や海外にある日本の大使館、世界各地で暮らしている岩手県人会のメンバーなど、国内外を問わずさまざまな人と関わっている。

 そんな国際室での業務に、海外の国や地域と交流を持つための素地づくりがある。例えば岩手の県産品を海外で流通させる際、全く交流のない土地よりも何らかのつながりのある場所の方が、より効果的な販路を確保することができる。そのための土台を作るのが、国際室における重要な役割の一つになっているのだ。

 県職員の仕事は部署ごとに全く違う側面を持つが、熊谷さんは「初任地でもそうでしたが、その部署でしか得られない知識や経験があります。特に国際関係は学生の頃から関心を持っていた分野なので、興味深く取り組んでいます」と、充実した表情をのぞかせた。


美しい刺繍が施された飾り物は、中国から研修に来ていた大連市職員の曲(キョク)さんから。切り絵のポストカードは、伝統工芸品の全国大会で知り合った、雲南省在住の切り絵の先生からいただいたもの

美しい刺繍が施された飾り物は、中国から研修に来ていた大連市職員の曲(キョク)さんから。
切り絵のポストカードは、伝統工芸品の全国大会で知り合った、
雲南省在住の切り絵の先生からいただいたもの


感染症の影響にも柔軟に対応

 2020年以降、国際室の仕事は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けることになった。海外に赴き他国と交流を図るといった業務は叶わず、国際関連のイベントも思うようにできていない。先の見えない状況が続く中で、現在はSNSに力を入れているという。

 熊谷さんが担当しているのは、Facebook「Rock On Iwate」とInstagram(@iwatelifeinjapan)を使った情報発信だ。これまではイベントや観光情報をアップしていたが、現在は買うなら岩手のもの「バーチャル物産展」を始めとするさまざまなキャンペーンや、身近な自然の移り変わりなどを投稿。感染症対策に配慮した内容を、ほかの職員と知恵を出し合いながら発信している。

 そのほかには海外で暮らす岩手県人会のメンバーに、報道だけでは把握しきれない現地の状況や各国の感染症対策などについてヒアリングを行うと同時に、継続的なコミュニケーションも心がけている。

 「直接会って話すことができなくても、ビデオレターなどを利用して海外とのつながりを持ち続けることを大切にしていきたいです」と、熊谷さんは語る。

岩手の未来に望むこと

 そんな彼女が岩手の未来に望むことは、今まで以上に国際化が進んでほしいという思いだ。学生時代、海外に興味があったもののなかなか触れる機会がないと感じていた。

 「今後、アフターコロナを迎えた社会は、今まで以上に世界的な交流が盛んになることが予想されます。そうなった時に岩手の魅力をより効果的に世界へ発信できるよう、また、さまざまな国の人たちが岩手を訪れてくれるよう、今できることをやっていきたいです」

 熊谷さんは柔らかな笑顔を浮かべながら、そう語った。


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この記事を書いたひと

フリーライター 山口由(ゆう)

2011年、東日本大震災をきっかけに横浜から盛岡へUターン。現在はフリーライターとして、お店や人材の紹介、学校案内、会社案内、町の広報誌など幅広く活動中。取材を通して出会うさまざまな人の思いや歴史を知り、「岩手ってすごいなぁ」と実感する日々を送っている。趣味は散歩と読書、長距離ドライブなど。ホームページはコチラ。

https://tokkari-shouten.themedia.jp/

写真撮影

カメラマン 佐藤到(さとういたる)

カメラマン 佐藤 到

1969年宮城県白石市生まれ。進学で来県すると、岩手の環境や住みやすさが気に入って定住。 写真店勤務を経て、フリーカメラマンとして独立。 フィルム時代から経験を積み現在は人物・風景・スポーツ・スクールスナップ・ウェディング・料理・商品などなど何でも撮影します。
佐藤到 インスタグラム
https://www.instagram.com/forzaitaruy_ly25/

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