人情味あふれる老舗せんべい店
第33回 盛岡せんべい店 佐々木俊幸さん
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岩手で活躍するさまざまな“人”に焦点を当て、紹介する「いわてプライド」。 この土地に誇りを持って生きる人たちの、熱い想いを伝えます。
加奈子さんは現在、1945年から続くフクオカ食品の代表取締役を務めている。以前は町の観光協会で働いており、父で3代目となるこの会社を継ぐことは全く考えていなかったという。しかし父が他界し、これまで続いてきたものを途絶えさせてはいけないという思いが芽生え、跡を継ぐことを決意。会社経営はもちろん、豆腐作りのイロハもわからないまま4代目として走り始めた。
「会社の歴史や豆腐へのこだわりを聞いて育ったわけではなかったので、今までの流れを汲むというよりも自分で新しく作り上げる意識の方が強かったです」
そう語る加奈子さんが会社の代表となって、まず考えたことは「豆腐の原点に戻ること」だった。これまでオートメーションで行っていた工程を手作りに切り替え、「手寄せ」と呼ばれる昔ながらの製法を取り入れた。添加物を一切使わず、しっかりとした豆の味を持ちながらも主張しすぎない“良い塩梅”の存在感。手作りならではの温かさと、懐かしさを感じる豆腐が出来上がった。しかし、そこに至るまでにはたくさんの試行錯誤があった。
岩手県産大豆を100%使用した豆腐を始め、さまざまな商品を展開
フクオカ食品を継いだ時、さまざまな豆腐を食べ比べたという加奈子さん。「これだ」と思う豆腐に出会った時には、製造する店に豆腐作りのポイントを教わりに行ったこともあるという。
「あの時は一升瓶を持って、『教えてください』とお願いしに行きました。超アナログなやり方で驚かれましたが、とても親切に教えていただきました」
もちろん教わったからといって、すぐに安定して製造できるわけではない。柔らかすぎたり固すぎたりを繰り返しながら、ようやく今の豆腐にたどり着いた。子どもの頃は、「絶対に豆腐づくりはしない」と思っていたという加奈子さん。そんな彼女が本物の豆腐を求める背景には、一つの信念があった。
「お客様に食べていただくからには、美味しくて体に良い豆腐を作りたいんです」
そんな彼女の思いがこもった商品を、愛してやまないファンは多い。取材当日には雪の降る中、秋田県から来た人が「ここの厚揚げを食べたら、ほかのものは食べられなくなっちゃって」と、いくつもの商品を購入していった。そんな光景を見て加奈子さんは「本当に嬉しい」と言って笑顔を見せる。
現在は豆腐や厚揚げ、湯葉などといった商品をブランド化するため、「雫石とうふ工房」という屋号を掲げ、2018年からは移動販売もスタート。雫石町や盛岡市、八幡平市などを定期的に巡回している。
生地の具合を見ながら、職人が揚げる温度や時間を調整していく
豆腐は良質なタンパク質や脂質を含む「ヘルシーフード」として、近年、注目を集めている。脂肪代謝や脳の老化予防に効果的なレシチンや、骨粗鬆症、動脈効果を防ぐイソフラボンなど、健康を維持するために必要な栄養が豊富に含まれているのだ。そして豆腐のパワーに注目しているのは、国内に限ったことではない。
「2019年には、ニューヨークでお豆腐のイベントを開催したんです」と語る加奈子さん。マンハッタンの南東部に位置する街、イーストビレッジで豆腐の作り方やアレンジメニューの紹介、実演、実食などを行った。女性を中心に健康について高い関心を持つ人たちが集まり、満員御礼の盛況ぶりだった。
「健康を意識する人にとって、お豆腐は注目の食品。実際に食べてみて『お豆腐ってこんなに美味しいものだったの?』と驚いている人もいました」
加奈子さんはこの経験を機に、豆腐を世界中に広めたいと考えるようになった。すでに昨年は冷凍の油揚げをニューヨークで販売し、今後はほかの国でも売り出すことを計画している。
「水がきれいな雫石町だからこそできる、美味しいお豆腐。いつか海外でうちの商品を買った人が、工房を訪ねてきてくれたら嬉しいです」
世界を視野に昔ながらの豆腐を作り続ける加奈子さん。彼女の夢が現実になる日は、そう遠くないように思えた。
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フリーライター 山口由(ゆう)
2011年、東日本大震災をきっかけに横浜から盛岡へUターン。現在はフリーライターとして、お店や人材の紹介、学校案内、会社案内、町の広報誌など幅広く活動中。取材を通して出会うさまざまな人の思いや歴史を知り、「岩手ってすごいなぁ」と実感する日々を送っている。趣味は散歩と読書、長距離ドライブなど。ホームページはコチラ。
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