いわてプライド

岩手で活躍するさまざまな“人”に焦点を当て、紹介する「いわてプライド」。 この土地に誇りを持って生きる人たちの、熱い想いを伝えます。

岩手の魅力に気づき、誇れる時代へ

第3回 岩手県副知事 保和衛さん

岩手の魅力に気づき、誇れる時代へ

大切だと思えることに
出会った瞬間

 東北大学法学部を卒業後、岩手県職員となった保和衛副知事。これまで工業振興や財政、政策調整などさまざまな仕事に従事し、2016年からは秘書広報室長として知事や副知事のサポートにあたった。その後、2018年4月より岩手県副知事に就任し、現在に至っている。

 勤続37年。これまで経験した業務の中で最も印象に残っていることについて尋ねると、保副知事は少し考えてからこう答えた。

 「本当にいろいろなことがありましたが、自分の中で仕事に対する向き合い方が変わったのは平成初期の頃です。合理化のため新日本製鐵株式会社釜石製鉄所(現・日本製鉄株式会社東日本製鉄所釜石地区)の全ての高炉が休止し、製鉄に関することで生業を立てていた釜石の企業の存続が危うくなってしまった。なんとかして事業を生み出さなければと、新しい技術の習得や商品を作り出すためのお手伝いをしていました」

 高速道路のない時代に何度となく通い、時には泊まり込みで活路を見出そうと奮闘した。まるで企業の一員になったように相手を思い、ともに最善策を考え行動する。その姿勢は一般的な行政職員から見ると、かなり踏み込んだやり方だった。しかし保副知事は、この経験をきっかけに「これこそが『役に立つ仕事』のやり方ではないか」と気がついたという。

「働いていると、どこかで自分なりのやり方を確立するタイミングがやって来る。私自身、いろんな仕事を経験する中で『これが大事だ』と思えるものに出会えたのは、とても幸せなことだと感じています」そう言って目元を和ませながら、激務であったろう当時を振り返った。


岩手県の政策形成の歩みについて、県職員向けに講演を行う保副知事

岩手県の政策形成の歩みについて、県職員向けに講演を行う保副知事


日々の心がけで
仕事のセンスを磨く

 現在は達増知事のサポートや各部門から上がってくる相談を受け、助言や決裁をするといった岩手県の舵取り的な業務を行っている。これまでの経歴を踏まえ菊池副知事と仕事を分担しているものの、その内容は多岐に渡る。通常業務のほかに、突発的な事故や災害が起きた場合にも適切な判断が求められるが、それらを行うためには日頃から県内各地の状況を把握しておかなければならない。

 また、最近では若い職員向けの研修で『仕事のセンスとはなにか』をテーマに講師を務めている。これは保副知事が自らの実体験や、若い職員たちに「こうなってほしい」という思いを伝える場となっており、書店に並ぶビジネス書にも引けを取らないものを目指しているという。

 「私の言葉で言うと、仕事で大切なものは『憑依・転換の術』。相手の立場や思い、願いを同じ目線を持って理解することで、自ずと仕事の進め方が見えてくる。できる・できないではなく、心がけるか否か。それを意識することによって、仕事の質は全く変わってきます」

 県職員は県内外を問わず、多様な人と接する場面が多い。また、県庁内部においても部門が違えば視点も異なるため、相手を理解することはさまざまな場面で役に立つ。保副知事が自身の経験を持って語るその言葉に、はっとする職員は多いだろう。


「ここぞ」という時に使うのは、浄法寺塗のボールペン

「ここぞ」という時に使うのは、浄法寺塗のボールペン


ほかにも浄法寺塗の湯呑や南部古代型染の名刺入れ、南部鉄器のペーパーウェイトなどを愛用している。 左上のキャラクターは、岩手のポケモン「イシツブテ」

ほかにも浄法寺塗の湯呑や南部古代型染の名刺入れ、南部鉄器のペーパーウェイトなどを愛用している。
左上のキャラクターは、岩手のポケモン「イシツブテ」

郷土の魅力を自覚すれば
自然と誇りにつながっていく

 保副知事から見た岩手県民は、とても真面目で職人気質にも似たタイプが多いようだと語る。あまり目立つことを好まず、思慮深く行動する。しかしその根底には、都会に対する劣等感のような感情が年配者を中心に見え隠れしているように感じられるという。

 農業などの第一次産業が中心だった頃は収穫が天候に左右されることも多く、経済的には苦しい時代も多かった。しかし、時とともに人の価値観は大きく変わった。経済成長一辺倒だった時代は終わり、これからは経済も大事だが豊かな自然や、より人間らしい暮らしが今まで以上に注目されていくだろう。岩手県には、それにふさわしい資源が豊富にある。

 県外から来た人たちは、たびたび「岩手はこんなに素晴らしいのに、なんでもっとPRしないの?」という疑問を口にする。しかし、もともと『おしょす(恥ずかしがる)』の精神が根強い岩手県民にとって、「お国自慢」は苦手な分野だ。

「こうした県民性は長い歴史の中で培われたもので、すぐにどうにかできるものでもない。無理に頑張るのではなく、まずは自分たちが岩手の魅力を知り、誇りを持つこと。その上で語る言葉は、例えわずかであっても熱を持ち、相手の心に響くのだと思います」

 県内各地を訪れて郷土の魅力を実感しているからこそ、岩手で暮らす人たちには「もっと自信を持ってほしい」と語る保副知事。その言葉には、岩手という土地と人への愛情があふれていた。


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この記事を書いたひと

フリーライター 山口由(ゆう)

2011年、東日本大震災をきっかけに横浜から盛岡へUターン。現在はフリーライターとして、お店や人材の紹介、学校案内、会社案内、町の広報誌など幅広く活動中。取材を通して出会うさまざまな人の思いや歴史を知り、「岩手ってすごいなぁ」と実感する日々を送っている。趣味は散歩と読書、長距離ドライブなど。ホームページはコチラ。

https://tokkari-shouten.themedia.jp/

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